私が鍼灸学校で学んでいた時も、確か担任の先生が「手を痛めるような事はしちゃだめですよ!弦楽器とか土いじりとか機械いじりとか」と言っていた。恐らく手の皮が厚くなって指頭感覚が鈍くなることでいい治療ができなくなることを危惧していたのだろう。
しかし、手を大切にするということは大事に保護することなのだろうか?日焼け止め塗って手袋して大事にしまっておく。私はちょっと違う気がする。
小林一夫氏。伝説の研磨職人。触っただけで1000分の1ミリの凹凸を見極められる世界に誇れる研磨技術を持った職人さんです。職人さんの手は長年の仕事でゴツゴツとして手の皮も厚くなっているだろう。それなのに繊細な変化を見極められるのはなぜか。やはり大切なのは「感覚」を磨くということだと思う。日常の家事や雑務で手をしっかり使う、そこから色々な感覚を磨いていくことが手を大切にすることだと思う。
うちの治療院は田舎にあるので雑草がよく生えます。時間を見つけてはよく草抜きをするのですが、草の抜け方で土の中の水分量や根の張り方をイメージしたり、根が切れないような絶妙な力加減や力のベクトルを模索しながら草抜きをしています。自然を相手にする、自然との対話という点で東洋医学にも通じるところがあると勝手に思い込んでやってます。
それを見ている副院長は「除草剤使ったら?」
私「それだと熱が出た時に解熱剤を飲むのと一緒だ」
などとよくわからないやり取りが時々起こります。
鍼灸師という仕事は患者さんに触れる仕事。やはり柔らくて温かい手が理想です。かつての名人と呼ばれた鍼灸師は高齢になっても赤子のように柔らかい手であったそうです。